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冬眠と眠る

山口県 美祢市 秋吉台

34°14'46.10"N, 131°14'36.05E

2, 4 - 3, 5
2011

 山口県秋吉台での滞在で私は地域一帯に星散する洞窟への住民誘致について思いを巡らせ、住空間としての利用や古代へさかのぼる洞窟に住まう動機や遺跡を辿っていた。
 現役のケイバー達や洞内生物・地質学・人類学の研究者達へのインタビューや対話から、私は450を超えるほどの洞窟群へのさまよい方とフォーカスを学んでいた。
 そのひとりでもある熟年の研究者 配川武彦氏は、インタビューの話も少なに、彼の巡った膨大な量の洞窟の中からいくつかを薦めてくれる。物件紹介の様に巡ったその旅は、居心地の良い洞窟遺跡や、洞口から見晴らしの良い穴、火山灰からできた粘土に深く覆われた洞窟へと続いた。旅の最後に彼は洞口に注連縄を渡した水の神を祀る洞窟へと案内してくれる。 かつては水が滾々と湧き、農業用水や貯蔵庫として利用されていた洞窟も今では涸れ、形式的な冬の祭りや祠だけが残されていた。
 地域の人々に親しまれ、利用されてきた洞窟の機能や道具としての知能に興味を持った私は、その洞窟に約1月間寝床として通っていった。そしてそこに既に住まう冬眠のコウモリ達が読み取る水流や地形、温度に寄添いながら闇に溶け込んだ時間の中に過ごしていく。
 洞内での経験を私は日記や写真で記していたが、記録に追われている時間への疑問や、ドキュメンテーションを続けていくことが生きていることに追いついてしまうことにどこかで疑問に感じていた。

 プロジェクトの途中で私は未来を扱うことについて関心を持ち、いままでのリサーチで撮り溜めた写真をタロットのように遊び、使うことにした。
占うときその意味についてはわからないところが、暗示を含む事柄が嫌いな自分には合っていたし、思いだす為の道具として使っている。